「……は、は……るなぁ…」
 水音が部屋中に響き渡る。腰を動かすたびに隼人の口から喘ぎ声と唾液が流れた。
 オレの上に乗って必死で腰を動かす隼人の瞳の緑は涙の膜が張って潤んでいて、動くたびにぽとりと頬を伝ってベッドのシーツのしみにへとなっていく。
 膝はすでに笑っていて、体重なんてもうオレの胸に預けたようなものなのに、それでも腰が前後にあたって隼人のいいところにあたるのか動かすたびにびくりと体を震わせるものだから可愛くてたまらない。
 隼人と出会って、好きになって、告白して、付き合うようになって、キスして、こうやって抱き合うようになった後でも隼人は変わらない。
 出会った頃から初心で天使のように清らかで、それなのに抱くたびにどんどん体が熟れて、触れればどこもかしこも反応するものだから神様が性別を間違えて創ったんじゃないかと思うくらいに隼人は本当に感度が良かった。
 オレのあそこを咥える場所はもう完全にオレの形を覚えてて、若里春名の為だけの場所なんだと思うと抱くたびに優越感を覚える。
 隼人を好きな人間は多いけれども、隼人が好きな人間はオレで、オレ以外はこの孔に挿れるどころか、見る事だって出来ないんだ!と思うと嬉しい。もちろん一生触るのも見せるのも許さないけど。
 若里春名専用って隼人に書きたいと思うけど、仕事があるから無理だろうなぁと思うと少しだけさびしい。
 もっとも、隼人に春名専用って言うと少しだけ恥ずかしそうに、でも笑っていたから隼人だってそう思ってくれてるんだなと思うとオレは愛されてるなぁと思う。
 何度抱いても隼人は抱き足りなくて、こうやって二人で暮らすようになって、次の朝に早い仕事があったり、お互い余程疲れてない限りはえっちしてしまうのだけれども。
 


 でも、この時期にするセックスは隼人にとってちょっとだけ違う。
「……んっ…あぁ……は、はるな…」
 必死で伸ばす手を握り締めると隼人がふにゃりと嬉しそうに笑った。
「イきそう?」
「ん、んんっ……」
 こくこくとうなづく隼人の為に今までずっと一人でがんばって動いていた腰を掴んで思い切り下から動いて、隼人の奥の奥までにまで挿れて、つついてやると、隼人の声が更に甘くなった。
「あんっ……はる、な、はぅなぁ……」
 この時期になると、隼人から「えっちしたい」って誘うことが多いし、こうやって積極的になる。
 理由はわかってる。
「……あ、やぁ……んっ……は、はぅ…にゃ、あ…」
「ハヤト、ハヤト」
「はぅな、て……」
「ん?」
「き、きす……」
「……〜〜〜っ」
 もうすぐこの時期は―――
「んっ…んんっ…」


 隼人とオレが駆け落ちした日が近いから。




 卒業してすぐ、オレと隼人は駆け落ちした。
 その理由はもう親に隠しておけない、と思ったからだ。どちらが言い出したのかは覚えていないけれども、オレはプロデューサーと一緒に一張羅を買って、隼人の家へと行った。
『会わせたい人がいる』
 そう隼人が行って、両親が揃った日曜日にオレは隼人の家へと向かった。
 ドーナツを片手にオレは隼人の両親に挨拶をした。


「……オレ、ハルナと付き合ってるんだ」


 その言葉を聞いた隼人の両親がどういう顔をしていたのかは、覚えてない。


「すいません。でも、オレはハヤトがいないと生きていけないんです。だから―――」  


 ただ、別に許して貰えるとは思わなかった。
 否定されるって思ってた。それでもオレにとって母ちゃんが大事なように、隼人にとって両親が大切だってことくらい解ってた。
 だから、何とか許してもらえなくても、解ってもらえなくても、認めてもらえなくても言いたかった。
 けれど、


「気持ち悪い」
「……っ」


 オレ達の意思を砕いたのはご両親じゃなく、隼人のお兄さんだった。
「隼人。お前何言ってるのか解ってるのか」
「お兄ちゃん、お兄ちゃんは―――」
「お前は黙ってなさい」
「なんで?父さんも母さんもおかしいと思わないの?男同士だし、そいつ二留してて、バイトばっかりして俺よりも年上なのに隼人と同じ学年なんだよ?」
「お兄ちゃん!」
「気持ち悪いだろ。ただでさえお前がアイドルなんてやってこっちは迷惑してるのに、今度はホモ?どれだけ俺に迷惑かけるわけ?なぁ、はや―――」
 隼人のご両親も、兄の顔も覚えてない。
 ただ、あの時、
「……っ」
「……って……隼人、お前なに―――」
 あの時の隼人の顔は一生忘れないと思う。
 なきそうな顔で、悔しそうに、それでも実の兄をにらみつけて、普段笑っていてほとんど怒ることなんてない隼人が、あんな顔をしてたことを。


「……ハルナのこと、何もしらないくせに」
「…あ?」
「兄貴がそういうなら、俺もいいよ」
「……」
「俺もいらない。兄貴なんていらない、だって―――」
「隼人」
「だって、俺もハルナがいないと生きていけないから」
「……ハヤト!?」
 オレがとめるのも聞かずに隼人はスタスタと自分の部屋へと向かっていく。そして、3分も経たずにキャリーバックを手にしてやってきた。
「ハルナ、行こう」
「……ハヤト、でも」
「いいんだ。こうなるような気がしてたから」
「……」
 よくない。何もよくない。
 そういいたいのに声が喉にへばりついて何もいえなかった。
「……隼人!あのね、お兄ちゃんは混乱してるだけなのよ。だから……隼人も落ち着いて、ちゃんと話しましょう?」
「……母さん」
「隼人」
「…父さん」
「父さんは正直どういえばいいのか解らない。しかし―――」
「いいんだ。母さん、父さん」
「…え」
 そういって隼人は笑った。


「今まで、育ててくれてありがとう」


 お世話になりました、と隼人は深々と頭を下げてからオレの手を握った。


「隼人!!」


 最後に隼人の兄が声をかけてきたけれど、振り返らなかった。
「ハヤト…」
「ごめん……ハルナ」
 そう口にする隼人は泣いていたかもしれない、心の中で。
 けれど、オレはそれでも笑う姿に愛しさがこみ上げて仕方なかった。
 ああ、オレが好きになった子はこういう子なんだって。
「……ハヤト」
「……ハルナ」
 人が通るかもしれないけれども、オレはかまわず隼人を抱きしめた。
「ずっと一緒にいよう」
「ハルナ」
「ごめん、ハヤト」
「……」
 そう言うと、お互いの背中に手を回した。互いの体温が服の上からでも伝わって、ああもうオレ達は離れて生きていられないんだと思った。


 二人見詰め合って、手を握って歩き出した。
 もう大丈夫だと思った。
 隼人に家族を捨てさせてしまったけれども、それ以上に自分が隼人を愛そうと心にこの時決めた。たとえ世間の全てが隼人とオレの敵になったとしても必ず隼人を守ると。


 それでも、隼人は無意識に思い出すんだろう。
 この時期になると、家族を棄てたことを。
 だから、その分の愛情を求めるかのようにいつもより激しく乱れるし、性行為をしたがる。自分としては気持ち良いし隼人は可愛いし、自分の愛を伝えられるし、まさに一石三鳥だからいいのだが、いつかはこの時期になっても「ハルナがいるから大丈夫」と思えるようになったらいいなと思った。


「……っ!」  


 最後の最後に隼人が思い切り締め付けてきて、そのまま最奥に射精した。隼人もイったようで、もうさらさらとした精子をオレの腹にぶちまけて、そのまま頭がオレの胸にもたれる。
「……満足した?」
「……んっ……もう、ハルナのでお腹いっぱい…」
 そう言って、お腹を擦る隼人の姿を見て更に胸が高鳴るが、さすがにオレも両手が埋まるかどうかまでセックスした後だと勃つものも勃たない。
「んっ……」
 隼人の中から自分のものを引き抜くと色っぽい吐息とともに隼人の肛門からゆっくりと白濁とした精子が縁を通って、双丘や太股を伝ってシーツへとぽたぽたと流れていく。
 正直なところ写真を撮りたいくらい厭らしい。
「…ハヤト」
「うん?」
「写真、撮ってもいい?」
「っ……駄目っ!さっきそういって、ハルナいっぱい撮ったじゃん…」
「ハヤトの好きだなって思うところは全部撮っておきたいの!撮ってもいい?いいよな?」
「だ、だめって…あっ」
 まぁ、拒まれながらも隼人のえっちな写真をとりあえず自分のカメラに納める。
 パスワードをつけてるのでもちろん他の誰かに隼人の可愛い姿が見られる心配はないから大丈夫。フォルダ分けもしてるし。
「……ハルナの馬鹿」
「……ごめん、嫌いになった?」
「ずるい……そういうこというの」
 オレがハルナのこと嫌いになれるわけないじゃん、と言う恋人がいとしくて、またオレは隼人の唇に自分の唇を寄せた。
「……んっ…」
「…隼人、眠い?」
「うん……でも……」
「処理なら、オレがやっておくから、ハヤトは眠りな?」
「あ……」
 そういって、頭をなでると、隼人の美しい瞳が徐々に瞼が落ちて隠れていく。
 残念だなと思うけれども仕方ない。
「とりあえず、風呂からお湯持ってくるかー」
 いつもなら一度お風呂に入ってしまうのだけれども、さすがに隼人が疲れきってるし後ろの処置と、隼人の体を綺麗にして終わろう、シーツとかは明日でいいやと考えオレは風呂へと向かう。
 それにしても、オレのものでぐちゃぐちゃになってる隼人は何度見てもえっちで本当に可愛いと思った。
 オレが触れるたびに寝ている隼人が甘い吐息を出すのを感じながら、必死で相手は寝ているんだと言い聞かせて、処理をさっさと済ませてそのまま隼人の隣に入り込む。 「おやすみ、ハヤト」
 二人のためのベッドは抱き合って眠ると広すぎるように感じた。





「……んっ…」
 小鳥の鳴き声がする。
 オレは目を覚ますものの、けだるい体を動かすのが嫌なのともう少し恋人の体温を感じていたくて目を閉じて、寝ようとしたーーー時だった。
「……ハヤト?」
 隼人のぬくもりに何か違和感が感じた。
 小さい、というか、どこかおかしい、と感じた。
「……ハヤト?」
 オレが名前を読んでも反応が無い。まだ寝ているのだろうか。そう思いながら目を開いた。その瞬間、信じられないものが目に入った。


「……え」


 ハヤトがいた。
 けれど、ただのハヤトではない。
 若里春名が愛してやまない隼人であることには間違えないのだが、目の前の隼人は―――
「こども…?」
 どこをどうみても7歳かどうかの、小さな子供にしか見えなかった。



「……おとうさん…?おかあさん?おにいちゃん…?」
 目をこすってかわいらしい欠伸をしてハヤトはよいしょ、と声を出して自分の体を起こす。
 そして、じっと黙ってオレを見て―――


「……」


「は、ハヤト…」
「……」
 それから驚いたように目を丸くして、
「うっ……」
 隼人は涙を流してしまった。
「は、ハヤト!!」
 どうしよう、そりゃ怖いよな。
 どうやらハヤトは記憶を失ってるのか、体と同年代に記憶が戻ってるらしい。
 理由はわからない。もしかしてここ数日ほぼ毎日えっちしてるからか?と思ったけど、オレとハヤトは一緒に暮らし始めてほぼ毎日してた!あ、これ関係ねえや!と自分で自分に突っ込む。
「ハヤト…」
「どうしよう」
「…?」
「ハヤト、いらなくなっちゃったんだ…」
「え……」
 えぐえぐと泣くハヤトにどうしたものかと思っていたが、どうやらハヤトはオレに驚いて泣いているのではなかったようだった。
「…ハヤト?」
「はやと、おにいちゃんみたいに……あたまよくないから、おかあさんもおとうさんもいらなくなっちゃったんだ…」
「っ…」
 その言葉に、ハヤトがけしてオレの前に一度も出さなかった兄への劣等感を感じた。
 ハヤトが棄てたもの。
 オレを選んだせいでハヤトは家族を棄てた。でも、それはずっと前からハヤトにとって燻り続けていたものがあったらしい。
「……ハヤト…」
「どうしよう、どうしよう…」
「……ハヤト」
「はやと、もう誰にもいらないんだ……っ」
「っ…」
 その言葉が余りにも痛々しくて、たとえ小さくなってもオレにとっては大事な人であることには変わらなくて、オレは目の前のハヤトを思い切り抱きめた。
「おにい、さん?」
「大丈夫だから…」
「っ…」
「理由があって、父さんと母ちゃんと、お兄ちゃんはいないけど……その分、」
 嘘でも、そんなことないとはいえなかった。
 だって、ハヤトと暮らし始めて一度もハヤトの両親から電話も手紙もなかった。
 事務所は変わっていないのだから連絡を取ろうとすれば取れないこともない。それでもハヤトの両親は結局兄の主張を選んだ、そういうことだ。
 それはもしかしたらずっと昔からそうだったのかもしれない。
 だからハヤトは説得ではなくあきらめることを選んだのかもしれなかった。それでも、


「……その分、オレがハヤトのこと大切にする」
「……」


 それでも、たとえどんなときでも変わらない。
 どんな姿でも、オレにとってハヤトはハヤトで、永遠に愛するって決めたことは。


「……ほんとう?」
「ああ」
「おにいさん、おにいちゃんよりも、はやと、すき?」
「ああ、オレはハヤトが、」
「……」
 改めて言うのは恥ずかしいなと思いながらも素直に口にする。
「ハヤトが世界で一番好きだよ」
「……ほんとう?」
「ああ」
「いちばん?」
「うん」
「ほんとうのほんとう?」
「本当の本当」
「ぜったい?」
「絶対」
「……っ……!!」
 そう言うとハヤトは恥ずかしそうにはにかんで、それから満面の笑みを浮かべて、少しだけ遠慮がちに、おそるおそる、けれど確かにオレの事を抱きしめた。
「おにいさん」
「うん?」
「あの、なまえ、なんていうの?」
「……ああ、オレは―――」
 ああ、ハヤトは―――



 たとえちっちゃくてもあったかくて可愛いなぁ……
「はるな、わかざとはるな」
「はるなおにいちゃん?」
 そう、オレはハヤトへの愛情の重さを確認した。
「はるなでいいよ」
「っ…!!はるな!」
 同時にハヤトと「ハヤト以外とえっちもしない、ひとりえっちしない」という約束をしたけれど、こう小さくなった以上、ハヤトとの行為を見て一人で抜くくらいは許されるだろうかとふと思ったが、まぁそれは別の問題だった。
「はるな、だいすき!」


「ん、んんん!」
「はるな?」
「否、なんでもないよ…」
「うにゅ?」
「とりあえず、はやと」
「ん?」
「お洋服着ようか」
 そう言うとすべすべの肌を晒しているハヤトをどうにかしてやらなければと想い、言ってやる。
「はーい!」
 大きく手を上げてハヤトはとてとてとオレの前でばっと万歳をする。
 その様子が可愛すぎた。
 とりあえず適当にパーカーを着せてあげた。
 隼人は男にしては小さいけれども、さすがに小さな子供では大きすぎてぶかぶかだ。どうしたものか…と思ってると、
 テレビをじっと黙ってハヤトは見ていてお利口にしていた。とりあえず、仲間達に連絡するかと思いながら脳内会議をしていると、ハヤトが突然がばっと立って、こっちにやってきた。
 どうしたんだろうか、と思ってるとハヤトはにこにこと笑ってマイクを持ってるフリしていた。
「へいへいへい、ろまんみゅーじっく♪〜」
 ふふふーんと歌を歌うハヤト。じーっと見ているとパーカーをばっと開いて「おいで」と隼人は口にした。
「?」
「はるな!おいで!!」
「??」
「おいでなの!」
 なんだろう、と思ってると隼人はぷくっと頬を膨らませてとことこと歩いてくる。
 そして、パーカーにがばっとオレの頭をかぶせた。
「おいで!」
「……」
「はるな、つかまえた!」
 そして、嬉しそうにぎゅーっとオレのことを抱きしめてきた。


「……」
 今のハヤトは7歳くらいだっけ。
 あと10年…余裕で待てるな、とオレはハヤトを抱きしめながら考えた。




18禁で公開してた内容だったんですが読み直すと15禁くらいでいいかなって想ってR-15にしております。
いやいや、これは18禁!というかたがいたらまた考えたいと想います。