Thank You!

実はアニバ、スパライで二つともイベント内で衣装着たのは隼人だけという事実に気付いて震えあがりました。
と思ったんですが、思い返せば次郎先生が着てましたね、まぁいいか


「縁談!?って、オレにですか?」
「ああ」
 そう言って、この国の若き王である冬馬が手紙を渡してきた。
 隣国の輝国王からやってきたという手紙。  

 蒼の国と紅の国は古来から争っていた。
 国境付近はいつも荒れ果て、昔からお互いが嫌いで嫌いで嫌いで仕方なかった様子だった。
 なんとか改善しようと思いつつももはや国民の心は戻る筈もなく、二つの国はいがみあい続けていた。



 どうしたらいいのかとある日、両国は賢者は尋ねた。
 そして、賢者は少しだけ考えてこう口にした。


「互いの国で最も人気のある王族同士を結婚させよ」


 両国は戦争になるのだけはごめんだったため素直に言う事にした。
 その為に蒼の国と紅の国は国境付近―――荒れ果てた場所に小さな城を作った。
 小国のような、中継地点ともいえる場所。
 そこに二人の王族を住まわせるように、と。


 

 そして各国はそれぞれ国民に最も好かれている王族を訪ねた。
 その結果―――国民が名を挙げたのが『秋山隼人』という誰からも好かれる……悪く言えば王族らしくない人間だった。


「どうする、秋山」
「冬馬さん」


 とはいえ、この結果は冬馬にとっては頭を抱えるものだった。
 誰の名前が挙がっても結果は同じだが、冬馬にとって隼人は乳兄弟といってもいいくらいそばにいた人物だった。
 正直言えば、冬馬よりも人気が高く彼の血が傍流でなければ本来隼人が王座についてもいいくらいだった。
 というか冬馬自身すらそう考えていた。
 最も、頭の固い側近たちが許すわけもなく前王の息子である冬馬が素直に王になったのだが。


 隼人はどういう事か解っておらず首を傾げながら冬馬の説明を聞いていた。
「……秋山」
「は、はいっ」
「そんなわけだが、お前さえ嫌なら―――」
 断ってもいい、と冬馬は言おうとする。
 しかし、隼人は静かに首を振って「大丈夫です!」と言う。
「……秋山」
「シキやジュン、ナツキと別れるのは寂しいけど……でもこの国の為ですもんね!」
 そう明るく言うものの生まれ故郷を捨てろと言われて心底、隼人が納得できるわけがない事は冬馬とて解っていた。
 それでも隼人ならば多分そうするだろうという事も解っていた。
 素直で明るく思いやりがあり、努力家。
 そんな隼人だからこそ国民達は隼人を愛していた。

「……それで、いつ、その城に行けばいいですか?」
「あ、ああ……それは二週間後くらいに…」
 そう言うと隼人は少しだけ考えて「明日」と告げた。
「え」
「明朝―――夜明けと共に、ここを出ます」
「……秋山」
「多分、此処にいたら、決意、鈍っちゃいそうで……」
 駄目ですね、と無理に笑う隼人に冬馬は何て言えばいいのか解らなかった。
「……解った」
 悪いな、というのだけは出来なかった。
 それをしたら最後隼人の決意を全て無駄にする。
 それだけは解っていたから。



「……伊瀬谷や夏来、冬美に挨拶しなくていいのか?」
「会えたら……でも仕事でいないようなら手紙を書いていきます」
「そうか」
 朝一番に出る、といった隼人の意志は固いようで自分から結婚するよう言った手前冬馬は何も言えなかった。
 従者くらいつけたらどうかと思ったものの、紅の国は蒼の国に比べて人材が少ない。
 能力で劣っているとは思わないが、新しい城に人材を投与出来る余裕はなかった。
 表には出さないが戦争されて困るのはこっちの方だという事も十分に解っている。おそらく戦ったら最後蒼の国に負けるのだ。
 だから蒼の国が賢者の条件に頷いて助かった。


 そしてそう思ってしまう自分が嫌だった。
 秋山隼人はいわばこちらから出す人質だ。
 城は蒼の国の住人が多数おり、隼人はそこで何をされたとしてもきっと文句を言う事はないだろう。
 その事を考え、唇をかみしめた。
 こうするしかないと解っていながら自分の感情を冬馬は処理できずにいた。




「……ふぅ」  隼人は城の一番奥。  王族とはいえ末端の自分にとって相応しい質素な部屋に入り、そっと自分の宝物に触れた。
 隼人は音楽を愛していた。
 その為、いつもギターを奏でていた。けれどもうこのギターが他の楽器と合奏することはないだろう。
「……ジュンもナツキも出張中だったし、シキもいなかったなぁ」
 親友と言えるような人物達のところに言ったが何処にもいなかった。
 他にもタケルや大吾のところに行ったがやはり国全体の人材がいない今は誰もが忙しく隼人に会う暇すら誰もなかった。
 隼人は仕方ない、と諦め部屋に帰る時に買った便箋を出した。


 各自に対しての愛を込めた言葉、最後にもう会えないであろうこと、遠く離れても皆の事を思っている事を書き綴る。


 涙を流すことなく、淡々と書いた隼人は窓から外を見たが満月が夜空の上にある事を確認しながらも作業を辞めることはなかった。
 全員に書いた後、隼人は立ち上がり、少ない荷物を纏めた。
 とはいえひとつひとつの思い出があるため、なかなか作業は進まず時計を見れば夜明けまでもう少しだった。
 隼人は全てトランクに入れると同時に扉をノックされた。
 何だろうかと思っていると
「隼人様」
 使用人が現れ、祭りごとの為の王族衣装を持ってきたようだった。
「えっと」
「国王陛下が」
「冬馬さんが……」
 まだ婚儀ではないとはいえ、これから城に入るのだ。王族として最後にしてやれることとして冬馬なりに考えたのだろう。
 隼人は「ありがとうございます」と笑って白を基調とした王族衣装を身に付け、赤と黒のリバーシブルのマントを羽織る。最後に赤い薔薇を左胸に身に付ける。
 トランクを使用人は持ち「こちらへ」と隼人の望みどおりに用意された馬車が裏門にあった。
 隼人は頷いてそのまま馬車へと乗り込む。



「……」


 どんな女性なんだろうか。
 隼人はそう思いながら愛する国と別れを惜しみながら馬の足音を聞いていた。
 流れる景色も、ちらほらと見える家の灯りも、すでに働いている人たちの影も何もかもが愛しい。
 その様子を見ながら隼人は泣きそうになる自分を叱咤した。




「アニバ春名×総選挙隼人@」



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